※改正法案可決直後に、
旧「動物保護法制の改善をめざすネットワーク」の
サイトに 掲載した文章です。
<改正のポイント>
1,国の役割の強化
動物愛護法では、運用はすべて自治体の自治事務に委ねられていますが、未だに動物の愛護管理条例が未制定の自治体も多く、動物行政での地域格差が大きいことが問題となっていました。今回、国が動物愛護管理の基本指針を定め、それにもとづき都道府県等が基本計画を立てることとなりましたので、全国レベルでの動物行政の向上が期待できることになります。
2,動物取扱業者の規制強化
今回(2005年)の改正では、特に動物取扱業の規制に関しては大きな進展となりました。取扱業は登録制となり、登録しない場合は罰金が課せられます。動物の健康と安全の保持や飼育施設が国の基準に適合しない場合は、登録が拒否され、また登録後もそのような状態になった場合は登録が取り消されることになります。
登録業者は登録した旨を顧客にわかるように店頭に掲示しなければなりませんし、各事業所ごとに取扱責任者をおき、研修を受けることが義務付けられています。
また、業の範囲も拡大され、代理・仲介業に法が適用されるようになったため、インターネットを介した動物売買についても実態の把握と規制の網をかけることが期待されます。馬やイルカなどを用いたふれあい施設なども規制の対象となります。
3,危険動物の個体登録制
危険動物の種は政令で指定されているものの、その飼育の許可は都道府県等の条例に委ねられていたため、これも規制については地域格差が大きく問題となっていました。
また施設の許可制であるために、動物の繁殖・死亡や移動については実態が把握できませんでした。これをマイクロチップなどの個体識別装置により個体登録制とすることが予定されています。
4,実験動物の福祉への配慮
動物実験については、今回はじめて、実験動物福祉の原則とされる3R(苦痛の軽減、使用数の削減、動物を使わない方法への置き換え)の理念が明記されることになりました。現行法では1R(苦痛の軽減)が義務づけられていますが、これに加えて、2R(使用数の削減、代替法)が「配慮」事項とされました。残念ながら、これを周知徹底させるために方法は盛り込まれず、実態把握するための実験施設の届出制は見送りとなりました。
5,罰則の強化
動物虐待の罪は、殺傷と飼育怠慢、それに遺棄に分けられます。水や食べ物を与えず衰弱させる等の飼育怠慢の罪はが罰金30万円から50万円に引き上げられました。
また動物を捨てる行為に対しても、罰金が30万円から50万円に引き上げられました。
<実効性の確保のために>
法律ができても、それを運用する行政の体制が整わないと、法の実効性は期待できません。今後は、国(環境大臣)が作る基本指針や、動物取扱業の遵守基準の改正(個別基準の制定)、実験動物の飼養保管基準の改正などにおいて、この問題への実効性が確保されるように、期待したいと思います。
ペットショップやブリーダー、ふれあい施設、個人動物園などでの劣悪な飼育状態がいつも指摘されながら、これを改善させる法的根拠がなく、手をこまねくばかりだった問題も、これからは動物行政の向上と世論の後押しによって、改善させていける可能性が広がるでしょう。
<法案成立における課題>
今回(2005年)の法改正では、残念ながら、参議院でも審議無し、附帯決議無しでした。
今回の改正においては、前回1999年の附帯決議があったために、それを次回の改正の約束事項として働きかけることができたのですが、今回はそれがないため、積み残し事項が記録にも残されないことになります。
特に、動物虐待の定義や、愛護動物の範囲、実験動物施設の届出制、動物愛護推進員制など、いくつもの課題が次回改正への課題として残されました。
今後私たちは、これを忘れることなく、次の改正に向けて実効力のある動物保護法として機能するように、引き続き活動していきたいと思います。
2005年動物愛護管理法の改正にお心を寄せ、さまざまな形でご支援、ご協力いただいた全国の皆様に厚く感謝し御礼申し上げます。
また、当会に寄せられた15万名を超える署名簿は、衆参両院の70名近くの国会議員の方々が紹介議員になって下さり、請願としてすべてを提出いたしました。声のない動物たちのためを助けたいとのお気持ちで署名をして下さった全国の皆様、ほんとうにありがとうございました。
<参考:改正の概要>
以下、「動物の愛護及び管理に関する法律の一部を改正する法律」の概要です。
1.基本指針及び動物愛護管理推進計画の策定